バロックの時代28-レンブラント愛の傑作

1669年10月4日、レンブラント・ファン・レインは死去した。遺産目録にはわずか50品目しかなく、最後まで金のない人生だった。その前年に最愛の息子で、父の保護者ティトゥスまで亡くなった、さすがに生きる気力は喪失しただろう。彼は哲学者ゼウクシスを模した不気味に笑う自画像を描く。

しかし喜ばしいこともあった。1667年12月29日、彼の家をトスカナ大公コジモ3世が訪問したのだ。彼の絵はいまだにヨーロッパ中で評価されており、それゆえに借金取りは、彼の絵を発注したのである。そして少し金ができても彼の収集癖は治らなかった。

コジモ3世が見たのは、従来「ユダヤの花嫁」と呼ばれていた未完成の絵である。現在この絵は旧約聖書の中のイサクとレべカの絵と考えられている。創世記によると、イサクはペリシテ人の所に住み、妻の美しいレベカを略奪するために自分が殺されることを恐れ、妹とした。

この絵の場面は、不幸な夫妻が人目を忍んで愛を交わすシーンである。彼はこの絵に、最後まで正妻にできなかったヘンドリッキェへの思いを込めているのは間違いない。イサクはレベカの胸にそっと手を伸ばし、レベカは自分の手を重ね、心臓の鼓動を二人で聴いている。美しい傑作である。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。