バロックの時代26-国王、ヴェラスケス共に逝く

1665年9月17日、スペイン王フェリペ4世が崩御した。フランスとの和平後にカタルーニャを奪回、スペインの分裂は免れた。さらにポルトガルの奪回にも専念したが、ポルトガルは王女を英国王妃とすることに成功し、フランスの代わりに英国が援助した。

65年6月17日、モンテス・クラロスの戦いで、スペインは完敗し、ポルトガル独立が決定的となった。スペインの栄光の再現を期待されて登場したフェリペ4世だが、身に余る戦いを行って、スペイン凋落の引き金を引いたのは皮肉である。

その5年前の60年8月6日、王に先立ってヴェラスケスは死去していた。その年のルイ14世と西王女マリア・テレサの婚儀の疲れが原因である。この婚儀では2000万マラベディという莫大な費用が費やされた。彼は婚儀が行われるフェザン島に渡り、その施設を準備した。

会見の儀式の間は長さ140m、そのスペイン側入り口から飾られたタピストリーの制作を指揮したのはヴェラスケス。そして会見の間に飾られたのは何と黙示録だったという。黙示録は悪との戦争の勝利であり、敵国として相対した両者の和解に相応しい。フェリペ4世はカトリック統一の望みをこの婚儀に期待し、ヴェラスケスは最大限に応えた。時代は彼らを裏切るが、スペイン人は夢とロマンに生きるのだ。

下はプラド美術館正面のヴェラスケス像

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。