ルイ14世の時代、フランス演劇界に一人の天才的人間観察者が現れる、モリエールことジャン=バティスト・ポクランである。彼は裕福な商人の家に生まれたが、どうやら女優に恋をして、相続を弟に譲った代わりに金を出してもらい、自分の劇団をつくったようだ。
しかし最初の劇団は失敗し、彼は南仏に移って再起をめざす。そして喜劇に活路を見出し、ルイ14世弟フィリップ1世の庇護を受けてパリに戻って成功する。その絶頂のモリエールが1664年、ヴェルサイユ宮殿を貴族へお披露目する祝祭の6日目に上演したのが問題作「タルチュフ」である。
この劇はタルチュフという見た目信仰に篤く高潔な信仰者に子供達の反対を押し切り、家長がほれ込み、結局何もかも奪い取られかける、という内容である。その背景には、母后アンヌに代表される、見た目信心深いが現世欲だらけのフランスカトリックへの風刺があった。
この劇は、当然聖体秘跡協会から上演禁止の訴えがあり、公的な上演は禁止された。しかし民間上演は禁止されず、66年には少し和らげて上演されたが、今度は高等法院から公私を問わず禁止され、ようやく解禁になるのが69年である。ところがモリエールは懲りるどころかさらに過激な劇を準備していた。
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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