イギリスのこの混乱の中の1651年に発刊されたのがあの有名な政治哲学書「リヴァイアサン」である。著者ホッブスは、公爵家の家庭教師を務め、40年に混乱を案じてフランスに亡命し、同じく亡命中のチャールス2世の家庭教師を務めた。つまり王党派である。
ところがこの著書たるや、まず自然状態での人間の能力の平等を認めている。これはラディカルな平等派の主張である。実はこの著作第一部は「人間について」であり、冷静な人間考察の上に平等と各人の「自然権」を認めるのである。そこからがイギリス混乱の考察となる。
「万人の万人に対する闘争」という有名な言葉に象徴されるように、ピューリタン革命の中で、各派が平等に好き勝手な主張すると混乱が広がるばかりというわけだ。そこで個人は自然権を国家に渡し、統治者と社会契約を結んで国民となる。
待て待て、これはクロムウェル独裁承認ではないか。著作では、神から委ねられた王権の優位を認めるが、論旨は一貫していない。事実王党派からは批判され、亡命宮廷の出入りが禁止され、ホッブスは帰国して、クロムウェルに承認された。クロムウェル政治が終わり、彼はずっと批判に晒された。しかし神ではなく、国民に承認される国家という点で、絶対主義以後の国家を見通したものといえるだろう。
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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