バロックの時代21-傑作「夜警」の商業的失策

1642年初レンブラントの代表作「夜警」は完成した。この題名は通称であって情景は夜ではない、表面のニスが黒ずんでしまったのだ。正式名称としてふさわしいのは「フランス・バニング・コック隊長とウィレム・ファン・ライテンブルフ副隊長の市民隊」である。

ともかく彼は18人の集団が今にも動き出しそうな集団群像を制作した。この絵で同じ方向を向いている人は一人も居ない。旗を掲げる者、太鼓を叩く者、銃、あるいは槍の手入れをする者、皆何かをしている。市民を守るために生き生きと動く集団である。

しかしそんな先進的絵画の意図を理解する者はいなかったようだ。この18人はそれぞれ金を払っていた。彼らが望んでいたのは記念写真のような絵でしかなかった。さすがに自分はなぜ小さいのかとか後ろなのかとか文句が出る。レンブランドが明暗法を使い、奥行きを出したのも裏目に出た。

同年愛妻でありスポンサーでもあったサスキアが30歳で亡くなった。この後裕福なこの一族も距離を置くようになる。またレンブラントはさらに芸術的高さを求める。「私は富よりも自由を求める」しかしそれは成り上がりの多いオランダの顧客とすれ違うことになってゆくのだ。

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