バロックの時代18-ヴェラスケス「道化の間」

離宮ブエン・レティーロには、ヴェラスケスでなければできない部屋があった、「道化の間」の装飾である。道化や矮人は、宮廷で面白さをもたらす者として雇用されていた。16世紀後半からの150年間で、123名が居たことが記録によって明らかにされている。

この道化の間に、実に彼らの絵画をヴェラスケスは飾ったのである。その絵の中でも「ドン・ファン・デ・アウストリア」やオスマンの提督「バルバローハ」という名前があり、これらは宮廷で、この役を演じていた道化という推測ができるのである。

道化を描いたのはヴェラスケスが初めてではないが、真正面から彼らを「人間扱い」して描いたのは多分初めてだろう。傑作「パブロ・デ・バリャドリード」は、本名か役名かわからないが、絵だけ見れば貴族といってもさしつかえない。ご丁寧に背景を一切消して、その者だけを見せている。

下級の人間に聖性を与えるという特性は、初めからのものだが、ここまで徹底できるものか。一説として、ヴェラスケスの家系は実は改宗ユダヤ人コンベルソであり、社会に差別される者からの視点をもっていた、という説がある。ヴェラスケスの影響を受けたマネは「笛吹き」を描いている。

下左は道化師「パブロ・デ・バリャドリード」右は「セヴァスティアン・デ・モーラ」

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。