当時ルーベンスは50代の円熟期で、欧州中に赫赫たる名声を得ていた。その巨匠が、現国王フェリペ4世の絵を描かないわけがない。タイトルは「神に護られるフェリペ4世」。絵は消失しているが、実はヴェラスケスによる模写が残され、いかにもルーベンスらしく天使が登場している。
その絵はすぐ宮廷のサロン・ヌエーボに展示されたが、実はそれまで展示されていたのがヴェラスケス作フェリペ4世騎馬の絵画。この絵は侍従の間に移し替えられた。ヴェラスケスはバロックといえども肖像画に天使など描かない。これは国王でも同じで、写実の中に尊厳を描こうとするのである。
二人は気が合い、共にイタリア旅行を計画したというが、ヴェラスケスの内実はどうだったろうか?結局ルーベンスは何とスペインの外交大使となり、ネーデルランド枢密院書記官の肩書をもらってイングランドに旅立ち、ヴェラスケスは一人でイタリア旅行をする。
その直前にヴェラスケスは「バッカスの勝利」という初めてのギリシャ神話を描く。ルーベンスもバッカスを描くが、この絵はまるで違う。描かれているのは現実の庶民ばかり。この絵は「酔っ払い」の愛称で親しまれるが、ヴェラスケスはギリシャ神話を現実の中で表現することをアピールする。
下右は1635年ヴェラスケス作騎馬のフェリペ4世、右はルーベンスのヴェラスケス模写
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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