ダ・ヴィンチが最後まで持っていた絵画は3枚、いわずと知れた「モナリザ」そして「洗礼者ヨハネ」「聖アンナと聖母子」である。その三枚に共通するのが、謎の微笑。これは偶然とはい言い難い。そのうち「聖アンナと聖母子」にはドラマがある。
「聖アンナと聖母子」はわかりやすい。羊の角を掴んでいる子供に「ダメよ」といわんばかりに抱き寄せようとする母は、キリスト教徒でなくてもわかる。しかしキリスト教的には、羊は十字架の犠牲であり、母マリアはその道を進むのを止めようとしているのだ。
子供は自分の道を歩む、それは畢竟死への歩みである。いつまでも手元に置きたい母、その緊張のドラマがここにある。しかしそのドラマを祖母アンナは優しく微笑んで見守っている。悲劇であろうと慈悲の目で肯定しているのである。それは父なる神の立場といえるだろう。
精神分析学者フロイトは、祖母をダ・ヴィンチの離された実の母、聖母を継母として、この絵画を読んでいる。夢は未完ばかり、彼は自分が後世に残らないと考えていたらしい。彼にとって絵画はルネサンスの理想である。その微笑みに理想を追った人生の肯定を描いたのかもしれない。一つの時代の終焉である。
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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