ペストは経済的にも激しい変動をもたらした。何よりも人口の3分の1が死んでしまったのだから。都市よりも、農村部の被害が大きかった。まだ農村部に85%が住んでいたし、都市に比べて設備が不十分だった。
生き残った者は、死んだ者の土地をもらいうけて豊かになった。労働力の不足から一時期労賃があがり、イングランドでもフランスでも労賃統制をするハメになった。しかし土地をなくしたものはプロレタリアになり、戦争で盗賊が横行し、農民の反乱を呼んだ。土地で生きてきた領主層は没落し、王権の優位がすすんだが、ドイツでは領邦化がすすむ。
都市でも同じ変化があった。貴族層でペストで亡くなったものは絶対的には少なかったが、率で言えば多かった。最も地位が向上したのは、商工業者であった。生産は生き残った者に集中し、プロレタリアを抱える生産が増えた。享楽的傾向は豪華な新製品を産んだ。ユダヤ人の資産も彼らのものとなりツンフト、ギルドの時代となった
教会も潤うこととなった。かなりの者が死後の安寧のために、遺言で財産を教会に寄付したからである。ペストからの脱出に感謝する新たな教会が建設され、それはもっと神に近づこうとするゴシック建築となった。しかし真面目な聖職者達は、ペストと戦ってかなり命を落としており、高級聖職者が儲けることとなった。そしてペストで零落したプロレタリアを集めて王の常備軍ができていったのである。
下はフランボアイヤンゴチックの傑作ルーアンのサン・マクルー聖堂だが、ここにはペスト時代市の4分の3の柩を治めた大納骨堂がある。
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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