現代芸術23-エゴン・シーレ「死と乙女」

1915年クリムトと並び称される世紀末の画家エゴン・シーレの傑作「死と乙女」が完成した。このテーマでは中世以降絵画が描かれ、音楽でもシューベルトが弦楽四重奏を作曲している。シーレは父や兄弟を梅毒で亡くしたことから、女性と死は大きなトラウマだった、シーレは刺激的なヌードを描いている。

第一次世界大戦が起こると、シーレはオーストリアに招集され収容所の看守となった。そのときの重苦しい光景はこの絵にも反映されている。下のヨレヨレのシーツはまさにそれだろう。モデルとなっているのはシーレと恋人のヴァリである。

2人は今の生を確かめるように抱き合っているが、男のシーレは実は死神である。そしてこの絵は2人が別れる直前に描かれたという。確かに2人の目はお互いを見ておらず、どことなく冷めている。最後の抱擁をしていると言ってさしつかえない、ヴァリの愛を拒絶したシーレは愛せない男=死神なのだ。

ヴァリはこれまでシーレのミューズであり、彼のなまめかしい絵のモデルとなり、生活面でも彼を支えた。その彼女を裏切り、安定を求めて中産階級の娘と結婚した。そしてヴァリは従軍看護師として戦地で亡くなる。妻もスペイン風邪で子供を宿したまま亡くなり、同じ病気で本人も28歳の生涯を閉じた。この絵はまさに予言的ともいえるのだ。

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