現代芸術21-皇帝死の予言「影のない女」

リヒャルトシュトラウスは大戦中に楽劇「影のない女」を創作していた。この楽劇には、どこか架空の国の皇帝が登場するのだが、その皇帝は神の怒りに触れて石にされてしまうのである。まあまあ独墺どちらも皇帝を戴いている。戦争中にこんなものを発表すれば民衆に殺されかねない。

「影のない女」とは「子供のできない女性」のことを言っていたらしい。皇帝の妃は霊界の王の娘なので影がないのだ。しかし1年以内に影を持たないと皇帝は石にされてしまう。そこで貧乏で夫婦仲が悪く、もう子供などいらないといっている平民の女性を見つけて影を手に入れようとする。

皇后の乳母は魔法でイケメンを見せて誘惑して影を売ってもらおうとする。夫婦の別離寸前で夫婦はまた仲を戻し、皇后も影を取るにしのびなく、皇帝は石にされてしまう。しかし皇后の人間への慈悲を霊界の王の心を動かし、皇帝は復活してハッピーエンドとなる。

つまり帝室の事情にかまわず、民に深い愛をもってこそ皇帝は復活するとこのドラマは言いたいのである。しかし結局この楽劇が初演されたのは1919年の10月10日のウィーン国立歌劇場であり、そのときには大戦で敗北しオーストリア帝国は消滅していた。がこの楽劇初演は成功した。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。