世界大戦への道36-ジャンヌ・ダルクと大戦

実はアメリカの戦意高揚に一役買ったのがあのフランス救国の乙女ジャンヌ・ダルクである。1908年、フランスの救国の乙女ジャンヌはカトリックで列福された。これまで書いたように、すでにフランスではジャンヌブームが起きていた。19世紀後半のヨーロッパは近代に疲れた時代である。そしてナショナリズムが勃興する、ジャンヌはもってこいのアイコンとなったのだ。

そしてジャンヌは民衆のためにたちあがり、教会にも異を唱え、神(と教皇)にのみ従うと言った。まったくプロテスタントも社会主義者まで包含する。アナトール・フランスの言うように「我々はジャンヌの中で一つになる」これこそナショナリストの希望だった。

それを象徴するのが社会主義者シャルル・ペギーがカトリックに回帰して書いた「ジャンヌ・ダルクの愛の神秘」である。この作品はジャンヌが村に居るときの話で、「祈ればいい」「苦しむことが救い」と言うのに逆らって民衆の苦しみを放置できず、神もそれを赦すというのである。

ジャンヌはフランスのみならずアメリカでもポスターで使われた。アメリカではヨーロッパを救いに行くというアイコンが必要だったのだ。「そんなことはいいからーマリア母様ワタシの列聖もうすぐよねー」「はいはいこの戦争が終ったらすぐ聖女になれますよ」

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。