現代芸術18-大戦とアルプス交響曲

旧来の音楽を破壊して新しい音楽を創造しようというシェーンベルクら新ウィーン楽派の音楽は浸透しないどころか、第一次世界大戦下のドイツではやはり国威高揚というか従来のワグナーのロマン派音楽が蘇った。その代表者がハンス・プフィッツナーである、1917年に初演されたオペラ「パレストリーナ」はドイツ人の共感を呼んだ。

このオペラは3時間以上もかかる、内容は異端審問所の命令に悩みながら最後にはねつけ独自の音楽をつくるというものだが、ローマは協商国と読み替え、ドイツが決起すると読める。彼は新しい音楽を嫌い、ユダヤ人を排斥した。

ドイツ音楽の代表的地位にあったリヒャルトシュトラウスは大戦勃発時にオーストリアのチロルから墺軍の輸送車に乗って慌てて帰国、そしてアルプスの麓の山荘で書き上げたのが代表作「アルプス交響曲」であり、15年にベルリンで初演されて大成功を収めた。

リヒャルトシュトラウスは、自らの登山経験を思い出してアルプスの自然の雄大さを謳いあげたのだが、やはりロマン派の壮大な音楽であり、最初から金管が勇壮に響き渡る。この交響曲を聴いた当時の人は、登山をドイツ軍の進軍に置き換え、山頂に達した感慨を、新時代をつくる歓喜と読み替えたかもしれない。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。