現代芸術12-カフカ「変身」

1912年、20世紀的な小説が書き始められた。カフカの「変身」である。人間が変身するというストーリーは、伝説や神話によく見られる、しかし近代小説はリアルな人間を書くのが通常だった。カフカは伝説の世界をリアルな現実に取り入れることで全く新しい世界を開いた。

人間は皆多少なりとも内面と外面が違うのを隠している。LGBTなど最たるものである。外面は男性だが、内面は女性だからといって女装をすると奇異な目で見られる。「変身」のテーマはそういうことであり、ある朝いきなり自分が社会適応障害であることが外面に表れたのだ。

カフカは保険会社の職員として働きながら小説を書いていた。カフカはなんと「ミルクをコップで飲む」ことでさえ、割れて破片が飛んでこないかと不安に捕らわれる人間だった。「将来に向かって歩むことはできず、つまずくことはできる」とも書いている。

彼はフファーザーコンプレックスで、同居していたが絶えず白い目で見られていると思っていた。これは作品の主軸となり、「判決」や「審判」にも表れる。ともあれ自分の内面を別の世界に置き換えてドラスチックにさらけ出すという手法は、20世紀文学の主流となった。

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