さてその頃の欧州学問界はアリストテレスショックに見舞われていた。ギリシア古典哲学が伝わったイスラムではさらに早く、すでに9世紀のアッバース朝からアリストテレスが普及し、イスラム科学が生まれた。しかし彼らはラディカルとなり、奇跡や死後世界を否定するようになり、宗教と対立して廃れていった。
欧州に伝わったアリストテレスはイスラム渡来である。アリストテレスは「万学の祖」と言われる通り、哲学を越えて自然学にまで及んでいる。そして何よりもその目で見える現象を分析して抽象的な問題を解明する方法が画期的だった。これはすべてを神の力として考える神学とは対立して当然なところがある。
アリストテレスをラディカルにしたイスラム学者アヴェロイスことイブン・ルシュドは、世界を永遠の運動と考えた。こうなると、セム氏一神教の神による世界の創造や、神によるうるさいほどの世界への干渉とは相いれなくなる。
しかしこれはどこかの宗教ではなく、現象から論理的に導いた帰結というのがやっかいなところである。パリ大学でも論争が起きていた。聖書と違うと一刀両断しても収まらない状況があったのである。
下はミケランジェロの有名な「アテネの学堂」だが、左端に居るイスラムコスがイスラム哲学の巨人アヴェロイスことイブン・ルシュド
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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