現代芸術3-マーラー「大地の歌」

1907年からマーラー最後の激動期が始まる、長女が亡くなり自身も心臓病の診断を受けたのだ。マーラーは初期から死を考えていたが、今や現実のものとなった。そして10年9月、多分交響曲史上最大の規模であろう「千人の交響曲」と呼び名がつく「交響曲第八番」が初演された。

この後半はゲーテの「ファウスト」の最終の昇天の部分に音楽をつけた。近代の聖書であるファウストの福音は、「迷う者に幸いあれ」ということである。マーラーは天上と安静と地上の美を絶えず迷っている、その自分でも救われると信じたいのだ。

続いて第九番を作曲するが、マーラーは九番を作曲すると死んでしまうという変な迷信に捕らわれておりその曲は「大地の歌」と名づけられた。これは李白らの漢詩がドイツで翻訳され、それを翻案しながら作曲したものである。現世の美しさと儚さを謳う道教的世界観にマーラーは共感し、中国風ではなく、本当に東洋との音楽的融合を図った。

「大地のい歌」が完成すると。今度は管弦楽のみで交響曲第9番を作曲した。この曲は彼の音楽の集大成であり、また遺言である。その後10番にもチャレンジするが、完成できず亡くなった。マーラーの音楽は、生命への歓喜と死の不安が率直に表現され、現代の我々に身近に訴えてくる。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。