第6回十字軍21-聖アントニオ魚に説教

ドミニコ、フランチェスコの精神は次代へ受け継がれた。パドヴァの聖アントニオはたいへん人気の聖人だが、フランチェスコと違いインテリ。しかしそれを隠して下働きをしてある日説教をするとすばらしく、インテリが嫌いなフランチェスコも認めて神学の研究を許可した。

アントニオはドミニコのように、南仏へ行って異端を回心させようとした。しかし皆きいてくれないので、くるりと後ろを向いて海に話し始めると、魚が寄ってきて話をきいたという伝説、また異端の挑戦を受けてロバに餌よりもホスチア(聖体パン)を選ばせたという伝説が残っている。ちなみに彼は失せ物の守護聖者なので、無くなった物を探すのに頼めばいい。

ドミニコ会には、中世神学の大成者聖トマス・アクィナスが入る。彼は貴族の出身で、親はベネディクト会に入って聖職の出世コースの期待をかけていた。怒った両親達は彼を連れ戻して閉じ込め、色じかけまで使って落とそうとしたが、それを跳ねのけ、初志を貫徹した。

そして、ヨハネという子が幼い頃大病し、両親はフランシスコ会に捧げると請願して、フランチェスコに祝福してもらうとたちまち快癒。両親は「ボナ ヴェントゥーラ!(運が良かった)」と叫んだ。その子はこの両親の叫びを呼び名として、トマス・アクィナスと同じく、パリで神学を確立することになる。

下はヴェロネーゼ作「魚に説教するパドヴァの聖アントニオ」音楽は同名のマーラー作曲

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。