ロマン派以後10-蝶々夫人のリアル

1898年、アメリカ人ジョン・ルーサー・ロングが「マダムバタフライ」という短編小説を発表した。それがもとでプッチーニが創ったオペラが和名「蝶々夫人」である。ロングは日本に滞在した姉から聞いたという話だが、同じような「お菊さん」という話は有名になってこちらもオペラになっている。

「お菊さん」は長崎の現地妻の話で、現地ではありふれており、お菊さんは別れのとき渡された金勘定をしていたというラスト、だがオペラでは愛のドラマとなった。実は蝶々夫人の小説でもラストは自殺ではない。これを自殺にしたのは劇作家ベラスコでロンドン公演を見たプッチーニがオペラにしようと思い立つ。

日本女性の潔さは、ガラシャ夫人がオペラになって称賛されたように、西洋人の固定観念になっている。だが、ガラシャ夫人はカトリックで蝶々夫人も改宗している。2人は西洋人と同じキリスト教徒になったから感動を呼んだのだと思われる。実際オペラでも神道や仏教の扱いはよろしくない。

蝶々夫人は、アジア現地妻を描いたということで、いろいろな話題を呼び、ミュージカル「ミスサイゴン」も生まれた。現代演出では、「フィガロの結婚」も夫人は夫と和解せず「さまよえるオランダ人」のゼンダは男のために自殺しない。蝶々夫人も自殺直前で思い留まり去っていく演出も十分ありうるだろう。

0コメント

  • 1000 / 1000

キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。