第6回十字軍8-万物の共生「太陽の讃歌」

フランチェスコの魂は喜びに満たされたが、肉体の力は尽きようとしていた。彼は故郷に戻り、クララの居るサンダミアノ修道院の近くに小屋をつくった住んだ。目はほとんど見えず、顔のまわりをネズミがうろつく環境でつくったのが有名な「兄弟太陽の讃歌」である。

神の賛美から始まるこの詩は、神がつくった太陽、月すべてのものが兄弟だと讃える。この世のすべてを肯定し、皆が共生する世界の詩である。この詩をもとに映画「ブラザーサンシスタームーン」でドノバンが美しい旋律をつけている。

彼の時代は十字軍が欧州にまで広がる時代である。キリストは非暴力の思想であったが、現実に異教徒から攻撃される状況で「正戦」思想ができ、十字軍では「聖戦」という侵略思想となった。最初戦争に行こうとしたフランチェスコは回心して、和解と共生に生き、エジプトまでそのために行ったのであった。

そして彼は最後に「太陽の歌」を歌ってアシジの司教と市長を和解させた。その後医者に自分の容態をきき「歓迎します兄弟死よ」と叫び、「太陽の歌」に死の一節をつけ加えた。彼は生だけではなく、死もこの世の兄弟として受け入れ、和解したのである。

下は教皇フランシスコを迎えての聖フランチェスコを記念する式典でアンドレア・ボチェッリが歌う「ブラザーサン・シスタームーン(イタリア語版)」

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。