ロマン派以後5-悪女伝「マノン・レスコー」

1893年プッチーニのオペラ「マノン・レスコー」が上演された。椿姫、カルメン、サロメこれらの女性をフランスで「ファムファタル」と呼ぶ。直訳では「運命の女」だが、意味は男を破滅させる女ということだ。日本では「傾城」という言葉が当てはまる。マノンは18世紀に書かれた最初の作品である。

楊貴妃や淀君、アン王女、世の古今東西有名な悪女には事欠かない。ところが19世紀後半の芸術でこの悪女が大量生産される。背景には資本主義の女性労働が関係している。カルメンの職場はタバコ工場である、密輸もしているが。最初に出て来る工場の女達は貞淑さのかけらもないアバズレである。

地方から仕事を探して都会に出てきた女性からショービジネスで成功する者も出て来る。例えばサラ・ベルナールは田舎の貧しい娘で成功する前はパリに出てきて高級娼婦だった。モンマルトルでスターとなるダンサー達も田舎娘で都会の水に触れて変わった新しい女達である。

マノンの物語も3度オペラ化されている。彼女も田舎娘で妾になってから変わった女性として描かれる。恋人は彼女の救出に失敗し、囚人となった彼女と一緒にアメリカまで行く。マノンは日本で映画になったり、タカラヅカミュージカルになっているからファムファタルはまだまだ生命力を持っているのだろう。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。