近代と信仰18-資本と労働と信仰

1891年5月15日教皇レオ13世は「社会的回勅」と呼ばれる「レールム・ノヴァールム」を発表した。副題に「資本と労働の権利と義務」と書かれており、ここで初めてカトリックは近代の資本主義問題に対処したのである。もっとも労働者の青少年教育に生涯を捧げたドン・ボスコのような人もすでに居た。

この回勅では、私有財産の権利を認めると共に、それが万能でないことも述べている。つまり元はといえば神のものであり、人間の共有物なのだと。だから必要があればそれを分け与えなければならない、それは義務だと述べるのである。そしてはっきりと労働者の尊厳を認め、きちんとした賃金を払うべきだと言う。

一方で労働者には、憎悪にまかせる人たちの言うなりになって暴動などを起こすと、あとで後悔が待っているだけだ、と諭す。また国家に対しては、労働問題にしっかりと介入するべきだと提言する。これは先進国の労働者福祉政策を肯定するものだといえる。

中世の時代には、領主と農民が居て、聖職者は領主や騎士にキリスト教的義務を課すことによってある意味横暴を防いでいた面があった。しかし神の権威は失墜し、私有財産は今日に至っても至上の権利と化して国家の増税にも反対する。ビリオネア達を倫理に戻らせることは今日大きな課題といえる。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。