第5回十字軍10-欲をかいては失敗する

エルサレムを返すという願ってもない条件に反対したのは教皇代理ペラーヨとエルサレム大司教。そしてやっかいなのがジェノバ海軍だった。だってジェノバは、エジプトと仲良くやってるヴェネツィアを叩くことが目的だったのだから聖地なんざかんけーない。ところがあーだこーだ言うなかで11月、ダミエッタが2年余りの包囲でようやく陥落した。

この勝利で強硬派が優勢となり、十字軍はカイロめざして進軍することになった。しかし時期が悪すぎる。1221年7月、ナイル川は今度はスルタンの期待を裏切らず増水していった。アル・カーミルは援軍に来た弟達を使って十字軍の進軍を妨害させ、水を貯めて待った。十分引きつけて、水を貯めた堤を切り、十字軍を水に沈めてしまった。

一転ピンチとなった十字軍、洪水は凄まじく、ダミエッタも浸水し、疫病が発生した。そしてイスラムは一転高姿勢で「ダミエッタを返して撤退したら8年間休戦してあげるよ」という講和条件が示された。十字軍はまた揉めた。ここで頼りにしたのは神聖ローマ皇帝フリードリヒ2世の援軍だったが、それは待てど暮らせど来なかった。

残念ながら来たのは、ダマスカスからのイスラム軍だった。万事休した十字軍は、この提案に乗らざるをえず、1221年9月、十字軍は損害だけを出してダミエッタから撤退した。そしてこの失敗の責任は、援軍に来なかったフリードリヒ2世のせいにされた。

下はギュスターブ・ドレ作「第5回十字軍の敗北」

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。