第5回十字軍7-聖地奪回またも脱線

1217年秋、第5回十字軍は、聖地の前線都市アッコに到着した。しかし現地としては双方信徒ともあまり戦争などやりたくない。聖地巡礼には障害もなく、イスラムとの交易もすすみ、十数年の平和があった。何を今更というわけである。アイユーブ朝スルタンアル・アーデルは73歳である。

軍はエルサレム王ジャン、キプロス王と共にエルサレムに進軍するが、ダマスカス領主アル・アッザムは、先手を打って城壁を破壊して住民を退避させた。実はエルサレムは16世紀まで城壁がない都市なのである。十字軍も小競り合いばかりでらちがあかない。とうとうハンガリー軍は帰ってしまった。

年末、一旦十字軍はアッコに帰り、今後の方針を検討した。そのときケルンのオリヴァーという聖職者が援軍をひきつれて到着し、ヤル気の失せかけていた十字軍に火をつけた。彼も交えた会議で、敵の本陣であるエジプトの攻撃が決まった。またもや聖地奪回から的がそれた。

実はこの決定には、スポンサーであるジェノヴァが絡んでいる。ジェノヴァのライバルであるヴェネツィアは、エジプトと協定を結んで、攻撃のための船は出さない。第4回十字軍も脱線させた。ジェノヴァは、この通商関係を崩したかったのである。またしてもイタリア都市にひきづられたわけだ。

下は十字軍に出発するハンガリー王

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。