大作歌劇「アイーダ」をつくって自他共にヴェルディは歌劇の筆を折った、と思われていた。しかし楽譜会社リコルディの陰謀で、思わぬ形で最高傑作「オテロ」ができるのだ。リコルディは、若い台本作家ボーイトに秘密に台本を書かせていた、それは「チョコレート」という暗号で呼ばれた。
実はボーイトはワグネリアンで、ヴェルディなどのイタリアオペラを古いとけなしたことがある。そしてボーイト自身でも「メフィストフェーレ」というオペラを創るが大失敗してしまう。そんなことで2人の仲は良いとは言えなかった。しかし試しに「シモン・ボッカネグラ」の改作をやらせるとこれが良かったのだ。
瓢箪から駒のような形で始まったオテロだが、シェークスピア原作との違いは、何と言っても悪役イアーゴである。彼はアリア「クレド」で近代的利己主義を宣言する。愛を信じようとして信じられなくなるオテロはまさに近代の矛盾の中で引き裂かれるのである。
ヴェルディはこの「オテロ」で、劇と音楽、さらにアリアなどの声楽を高度に融合することに成功した。ともすれば声楽が管弦楽に飲み込まれてしまうワグナーよりも上手をいっている。そしてラストシーンで、美しい癒しと和解の音楽を入れることで、対立の19世紀に癒しと和解のメッセージを送ったのだ。
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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