何ものをも容赦しないインノケンティウス3世は、前代未聞のキリスト教徒への十字軍を敢行しようとする。南フランスの異端「カタリ派」である。南仏は、以前から見た通り、古代からの伝統が息づき、独特の文化がある。言語もオック語で、どうやらこの二者は重なるようだ。
カタリ派は10世紀に遡る歴史がある。第2回十字軍の立役者聖ベルナールも説得に訪れ、聖女ヒルデガルトも警告の予言をしている。思想的にはグノーシスの影響が強く、善悪二元論である。魂は善肉体は悪、現世は悪がつくった。肉体の悪を避け、魂を清めねばならない。
キリストの受肉や受難を軽んじ、聖霊を重視する。キリストは魂の世界の告知者となる。ここまで来ると正統派とはかなり違う。しかし清廉な生活を実践することでは悪いことをしているわけではない。聖職専業者は居らず、聖職者も職業に従事していた。
カタリ派はヴァチカンの支配から独立し、トゥールーズ伯などの庇護で、独自の位階制度をつくっていた。ヴァチカンも最初から事を荒立てるつもりもなく、説得者を送っていた。しかし皆失敗する。なぜかというと、カタリ派のほうが清廉でキリスト教らしいのだ。
下はカタリ派記念碑に刻まれた聖霊の鳩
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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