ベルエポック18-蓄音機の発明

1877年12月7日、トーマス・エジソンが蓄音機による音の録音と再生に成功した、このときから「複製芸術」の歴史が始まった。「複製芸術」を論文にしたのは、1936年のワルター・ベンヤミンである。ベンヤミンは、芸術を儀式との関連に注目し、複製芸術は、芸術の儀式への寄生的依存から解き放ったとしている。

これに対して1947年テオドール・アドルノは、アメリカの文化に注目し、「文化産業」という言葉を生む。アドルノによれば、複製芸術とは解放ではなく、むしろ権力の道具であって、大衆に娯楽を与えてそれに熱中させて、批判的な観点を忘れさせると警告している。

現代的エンタメを見ても、ライブなどはまるで儀式である。漫画「聖おにいさん」の中でも、ライブ会場に紛れ込んだイエスとブッダが、新しい宗教だと勘違いしているのは的を得ている。ライブの複製としても、その儀式を同じようにお茶の間で体験するのだから、ベニヤミンは楽観的すぎである。

19世紀に出たサラ・ベルナールのようなスターは、20世紀になって複製芸術に乗って一気に世界的となり、セレブとなった。もはや家庭やPCなどで大衆は夢に酔いしれて現実を忘れ、あこがれとなる。これを新しい宗教といわずして何というだろうか。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。