第3回十字軍10-獅子心王アッコ奪還す

「何やってんだよアイツあ」と仏王フィリップ2世は思ったに違いない。すでに1191年4月にはアッコに到着している。ところがサラディンもアッコ救援に進軍し、包囲する十字軍の外側から包囲していたのである。いわば後方を守りながら前を攻める。なかなか難しい。それでも着実に前進させていた。

そこへ6月、英王リチャード1世は、キプロスから船で来る途中イスラム船を拿捕し、それに乗って堂々と到着したのである。キプロスを征服した英王軍に期待が高まり、歓声をもって迎え。それはイスラムまで聞こえたという。リチャードは兵士にボーナスを配り、実質総大将に収まった。

もともと戦力は五分五分、戦上手の大将を持つ英軍が加わることでバランスは大きく崩れ、わずか1カ月でアッコを降伏させてしまったのだ。しかしそれまでの激戦でフランドル伯を失っていた仏王にとって、獲物の横取りをされた気分であったのは間違いなかった。

果たしてフィリップはこのフランドル伯の相続の世話を口実に兵を引き上げてしまうのである。この2人はもともと父ヘンリー2世討伐のために手を組んだだけで、それが済めばライバル、しかも十字軍で仲は相当険悪になった。鬼の居ぬ間に、ではないが帰国してリチャード潰しの陰謀を謀るのである。

下は英王と仏王のアッコ入場

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。