近代と信仰16-聖リゴリ「星からの訪れ」

1871年、教皇ピウス9世は、ナポリの聖アルフォンソ・デ・リゴリを教会博士として認定した。聖アルフォンソは18世紀の人で、1836年に列聖されている。当時のナポリ王国はブルボン家の支配にあり、国王フェルディナンドは、国政を摂政タヌッチにまかせており、後引き継ぐのがアントワネットの姉である。

聖アルフォンソは家柄に恵まれ、才能ある弁護士だったが、神の正義を行うため法界を捨てて聖職に入る。そして何とナポリ王国内で、貧しく世俗からも教会からも見捨てられていた人たちのために尽くし、32年「レデンプトール会」を設立する。ところが当時のナポリ王国はヴァチカンと対立して承認は49年までかかる。

しかし彼の名声は高まり、ナポリ王国一世俗的な街アマルフィでも宣教活動を行うようになる。62年にゴーティの司教に就任するが、ここでも貧しい者のために働き、司教館には常時30~40人の孤児がいたという。

ピウス9世は、聖アルフォンソを近代倫理に勝る神の倫理の象徴としたようだ。2021年教皇フランシスコは、厳格主義の中で育った聖アルフォンソは、弱い人に接することで「慈しみの師に変えた」と述べた。彼は倫理学者として多くの著作があるが、今もイタリアのクリスマスに欠かせない「あなたは星から降りて来る」を作った。ポピュラーなメロディのこの歌は、ナポリの人たちにキリストの誕生を知らせるためナポリ語で書かれた。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。