ロマン派の時代53-ワルキューレと戦争

1869年ワーグナーの最大の楽劇「ニーベルングの指輪」の第一部(序夜)「ラインの黄金」がミュンヘンで初演された。ところがこれにワグナーが関係していない、金を食うばかりで尊大な作曲家に業を煮やしたバイエルン王ルートヴィヒ2世が自分の力で上演させたのだ。

さらに翌70年には第二部「ワレキューレ」も初演された。ところが、指揮者ハンス・フォン・ビューローは妻コジマをワグナーに取られたので指揮を断り、フランツ・ビュルナーが渋々やったので、あまり良い出来とは言えなかった。王は嫌なら観るなと平気で言った。

そんなオタク王にふりかかったのが普仏戦争だった。普墺戦争でオーストリア側で負けたバイエルンは、プロイセンと攻守同盟を結んでいた。王はもちろん戦争など大嫌いである、さらに野蛮なプロイセンも大嫌いだった。しかし首相からはやいのやいのの催促される。

フランスが勝てば火の粉が飛んでくる。が、プロイセンが勝っても南ドイツまで影響力が及んでくるだろう。王にできるのは参戦をビリッケツにすることだけだった。フランスが勝っても嫌々参加したという言い訳が立つ。そしてプロイセンにはバイエルンの独立を保障せよと手紙を書いた。

0コメント

  • 1000 / 1000

キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。