バリアン・イベリンは、映画では、フランスかどこかに居たようになっているが、塩野七生によればれっきとした中近東生まれのイタリア系、パレスチナに広大な領地を持っていた男である。ボードワン4世の信頼厚く、5世の後見にもなった。
武将としてもなかなかのもので、ボードワン4世の勝利に貢献し、ヒッティンの戦いでも脱出に成功している。その後彼はティロスに居たが、妻子がエルサレムに残っているので、なんと敵将サラディンに手紙を書いてエルサレム入りを嘆願した。
サラディンやイスラム聖職者も彼を高く評価しており、1日だけ帰還を赦した。ところが義にほだされたか、彼はそのまま大将になっちゃった。しかしそのわび状をサラディンに届けるとサラディンは「無理なし」と了承して妻子の脱出を許可した。まあこの2人の関係がエルサレムの市民を救うことになるのだが。
バリアンのエルサレムは、サラディン軍の正面攻撃に、5日間耐えきった。そこでサラディンは、攻撃を北東に移し、石油に浸した燃える石を投石。地下からも30メートル掘り進み、城壁の破壊に成功した。これで降参かと思いきや、粘り腰のバリアン、この期に及んでサラディンに1対1の会見を申し込む。まあ受けるほうも受けるほうだ。サラディンは無礼なヤツは容赦しないが、礼を知る男には寛大なのである。
下は攻撃軍から雨霰と降り注ぐ燃える石
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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