第2回十字軍9-十字軍ダマスカスで自滅

「えっこっち攻めるって?」ダマスカスの大将ウナルは正気か?と思ったに違いない。だってダマスカスはエルサレムの同盟者だ。しかし百戦錬磨の彼は何よりリアリストである。直ちにイスラム各地に檄を飛ばし支援を願う。さらに、アレッポのヌールッディーンに娘を嫁に出した。

何のことはない、イスラムを団結させちゃったのだ。そしてウナルは、十字軍側をかく乱にかかる。「攻められて渡すくらいならアレッポの配下になるよ」。しかも西欧から来た軍とは別に現地勢にも手紙を出した、「よそ者が悪いんだ」と。そして現地勢はホンネはそう思ってたのだ。

しかも、この十字軍は4月に決めたのに、3か月も準備にかかった、どうやら王達は聖地観光を楽しんだようだ。動き出したのは7月末、酷暑の盛りだ。その頃にはダマスカスはすっかり準備が整い、現地勢は完全にウナルに買収されていた。

7月25日、戦闘が開始されたが、果樹園に潜むダマスカス軍に完全に先手をとられ、酷暑の中、水のない平原へと誘導された。疲れの中で、「アレッポ勢の援軍が来る」との噂が飛んだ、もちろんウナルの仕掛けである。現地勢は、コンラート3世に撤退を進言し、指揮系統は完全に混乱、逃亡者も続出して、自称5万人の十字軍は、わずか4日間の戦闘で撤退したのである。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。