対するイスラム側は、なんとエデッサを落としたザンギーが、彼の酒を盗み酒をしていた部下に、罰を怖れて殺されてしまった。あっけない最期であった。しかし彼の息子がすばらしいのだ、聖王というべき英雄ヌールッディーンである、弱冠29歳。
彼はそれまでのイスラムの領主のように贅沢でも、ザンギーのように梟雄でもなく、イスラムを守り、アッラーのために戦う聖戦士だった、名の意味は「信仰の光」、しかし彼は預言者マフムードを名乗りたがってたと言われている。彼は自分だけでなく軍に禁酒をさせ、大騒ぎをやめさせた。プロパガンダ組織をつくり、自分の敬虔さを宣伝した。そうなるとこれまでのイスラムの太守や武将も、多少なりとも敬虔で清貧になららざるをえなかった。
十字軍の信仰による強さが影響したのだろうか?恐らくそれは否定できないだろう、しかしここでイスラムは初期のように聖戦で団結するようになってゆく。一方十字軍国家は、西洋やイスラムとの交易で儲け、世俗化し、イスラムと仲良くなっていった。欧州ではうだつがあがらなかった者はここで貨幣経済を覚え豊かとなった。「我らは東洋人となった」と書かれている。
実際この頃のイスラムは、アフリカ東からインドの北部にわたる統一市場だった。共通の言語、共通の文化、共通の法律、共通の貨幣をもっていた。中国の製紙技術、火薬技術も伝わり、ここで洗練された。さらに手形という信用も発達した。そのすべてが、十字軍の時代から欧州に流れ込むのだが、ともかくそれにイスラムの鮮明な旗印が加わったのである。
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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