1859年、後に聖人となるヨハネ・ボスコ(ドン・ボスコ)のサレジオ会が設立された。ボスコは先進都市トリノで司祭になったが、トリノにも地方から流れてきた青少年が、低賃金で長時間労働させられていた。平均寿命は19歳だったという。ボスコは教会でそんな少年に出会って、この子らのために働こうと決意した。
ボスコは農家の納屋から教育を始め、貧しい子供のための寮や職業学校、普通学校をつくっていった。ドン・ボスコの教育は「予防教育」と呼ばれ、外から押付けるのではなく、内にある神から授かった種を育てていくという内発的教育だった。これはスイスのペスタロッチもよく似ている。
産業革命の進行と共に、過酷な児童労働が広まった。先進国ではようやく児童労働を制限するが、孤児や浮浪児も横行する。この青少年にしっかりとした成人になる教育をする活動は先進的な活動だった。教皇の認可を経て、サレジオ会は世界の青少年を教育する修道会になっていった。
今日ではサレジオ会の学校は120カ国1600校にのぼる。日本を夢みたドン・ボスコの意志を受けつぎ日本にも1926年にチマッティ神父が来日し、学校がつくられていったイタリアの公教育とカトリックとの関係は、この後イタリア統一を経て悪化するが、現在はカトリック教育もイタリア伝統としてなされている。
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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