近代思想9-ショーペンハウアーの厭世哲学

「デカンショ~デカンショで」のデカンショは、デカルト、カント、ショーペンハウアーとも言われる。その主著「意志と表象としての世界」は、1817年に第一部が出版されたが全然売れなかった。43年55歳で続編を出版してようやく、ボチボチ認められる程度である。

しかし彼の哲学は独創的であり、ヘーゲルが理性が世界を動かすというのに対して、世界は「生への盲目的な意志」だという。確かに植物も動物も食うために生きており、近代の人間はまさに欲望の権化である。ショーペンハウアーは反理性主義を開いたといえるのだ。

では人間はどうしたらいいのか、それは「諦念’(あきらめ)」‘「観照」だというのだ。これはローマ末期に流行したストア派や、仏教の解脱に似ている。ショーペンハウアーは、インド哲学を引用している。実は彼自身もフランクフルトで隠遁生活を送るのだ。

ところが19世紀後半、彼の哲学は脚光を浴びてベストセラーになる。封建社会を脱却したのに、人間は争ってばかりである。東洋への関心もあいまって、ルネサンス以来の西洋の理性主義に疑問符がつくのである。彼の哲学は、ワグナーに影響を与え、フロイトも影響を受けることになる。

0コメント

  • 1000 / 1000

キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。