ロマン派の時代19-アルジェの女たち

7月王政は、シャルル10世のアルジェリア侵攻を継続し、オスマン派遣のベイを追放すると、無政府状態となり、アブデルカーデルがジハードを宣言して抵抗運動を続けた。そんな中の1832年、画家ドラクロワは、モロッコ使節団員としてスルタン訪問を行った。その経験で描いたのが「アルジェの女たち」である。

この絵は、34年のサロンに出品されて、強烈な印象を与えた。ナポレオンのエジプト侵攻後、オリエント趣味は流行していたが、実際のハーレムに入って描いた絵画はこれが初めてだった。まず西洋にない、アフリカの強烈な色彩が圧倒的であり、その後の近代絵画に強い影響を与えた。

しかし一方で、この絵は西洋近代から見た東洋の見方の代表とされている。中央に水タバコが置かれ、女性はアヘンを吸って陶酔しているように見える。他の女性も怠惰的な雰囲気であるし、床の乱雑さがその印象を強めている。画家はすでに27年にも「サルダナパールの死」で同じようなハーレムを描いている。

「自由の女神」は西洋の自由と進歩の象徴である。ドラクロワの女性は象徴的意味があり、ここではオリエントの放埓な象徴と描かれている。これは彼だけでなく、当世の西洋人が持っていたイメージだった。こんな人間達は、進歩した西洋人が支配して進歩させてやるしかない、そうとれる絵なのだ。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。