帝国分裂4-ヴェルダン条約、メルセン条約

843年、ヴェルゼン条約で帝国は三分割された。長男で戦争に負けたロタール1世は、中フランクという、ローマからアーヘンを結ぶ中央部が領地となった。とにかく皇帝という称号は残ったが、カールの帝国はこのとき3分割されてしまった。

ロタールの皇后イルムガルトは敬虔な女性で、3分割の後もアルザスにエルシュタイン修道院を建立しこの王国を確立しようとしたが、851年に逝去、その後聖女とされた。帝国統一の望みは無残に絶たれ、伴侶に先立たれたロタール1世は、失意のうちに855年崩御してしまった。

ロタールの帝位とイタリアは、長男ロドヴィコ2世が継ぎ、他2人の息子は中部フランクロタリンギアを継いだ。ところがロタリンギアを継いだ次男、3男が跡継ぎも無く亡くなった。長男ロドヴィコは、その頃イスラムの侵入に対処しており、その間に中部フランクは870年のメルセン条約で東西分割された。

ロタールの王国は、ロレーヌ(ロートリンゲン)地方に名を残すのみとなったが、この地方が20世紀に至るまで仏独の係争の元となったのを見ても、いかにこの分割の名残がその後の歴史に影響したかということがわかる、中世から近世にかけ、ブルゴーニュ公国が栄華を誇り、その後イギリスも含めた奪い合いの地となった。現在そこにEU本部が置かれているのも因縁というものだ。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。