カール大帝の夢20-ヨーロッパを決めた決断

新教皇レオ3世の危機にカール大帝は易々と動かなかった。反対派からは新教皇の讒言が届いていたからである。新教皇を援護する義理はなかった。そこで当時トゥール修道院長になっていたアルクィンに相談の手紙を書いた。アルクィンの返事が以下の通り。

「この世を統べるのは3人、うちローマ教皇と東ローマは現状頼りにならない、ただカールだけがキリスト教を守り、善を広げることができる」、と。だが、そこまで述べてアルクィンは述べる「教皇は神に選ばれたのだから裁くことはできない」。この返事を見た大帝の顔はどんなだっただろうか?

現実感覚をもってカールの補佐をしたアルクィンにしてこれである。この返事で、カールは教皇を助けることにした。ある意味でこの決断がヨーロッパをつくったといえなくもない。カールほどの権力なら教皇を自分の意で変えるのもたやすかったろうし、後代の王はそれを行っている。

カールが聖権を建てたおかげで、中世での教皇の君主に勝る権威ができたともいえる。ともかくカールは自らパーダーボルンに迎え入れ、11月9日にフランクの司教と護衛をつけて、ローマへ帰還することととなった。しかしこの滞在中に、どうやらカールに皇帝の打診があったようだ。

下は教皇レオ3世がラテラノ宮殿に描かせたモザイクの写しで、中央は初代教皇聖ペトロ右がカール大帝で左が教皇レオ3世。両剣論の始まりといえる画

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。