ヴァチカンの野望2-ドイツワイン聖人キリアン

ボニファティウスの前にもドイツに恩恵をもたらした宣教者が来ている。ドイツワインの聖人と讃えられる聖キリアンである。彼もやはりブリテン島から渡ってきた。キリアンは、660年頃ドイツ南部ヴュルツブルクを中心として、中南部に宣教した。そして彼が奨励したのはこの地でのブドウ栽培だった。

ぶどうは元々南の作物。現在でもドイツは最北での栽培地となっている。ドイツの南部はまだ日照時間も多く、ここから栽培日数を長くとり、品種改良をすることで、ドイツワインはライン川沿いに広がっていった。何より南では勝手に発酵が始まるが、ここで開発されたのが長い間蔵に寝かして発酵する製法だった。

そしてそのために利用されたのが修道院の蔵である。この熟成製法と共に、ワイン作りは修道院を中心とした一大産業となり、修道士はワインを改良し、ライン川沿いに商業ルートもつくっていくようになる。修道士とは実は産業指導員でもあったのだ。

キリアンは、ヴュルツブルク領主の改宗に成功するも、兄の未亡人と結婚していることを批判したため、689年領主の留守に夫人に暗殺されて殉教した。しかし彼の功績は農民達に忘れられず、現在も、ヴュルツブルクではブドウの収穫祭として聖キリアン祭が祝われている。

下はヴュルツブルクの聖キリアン像

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。