バロックの時代16-フランス古典演劇の始まり

スペインとの戦争が始まった1635年、アカデミーフランセーズがリシュリューの手で設立された。リシュリューは芸術文化の庇護者であり、フランスを文化面でも欧州一流にしたいと思っていたが、またそれは王権強化のためだった。このアカデミーは私的サロンだったが、宰相は公的機関にしたのである。

40名の会員が居たが、元の会員以外はリシュリュー派であり、国王援護の論陣を張った。同じカトリックのスペインと戦争するとあれば特にであろう。しかしアカデミーは、上からであろうと、フランス語を統一した辞書をつくり、今日までのフランス文化の基礎を築いた。

そのために宰相が奨励したのはあまり人気がなかった演劇である。ギリシャ演劇を題材にしたフランス古典悲劇はバロックのスぺクタルで貴族に愛好され、一時代後のラシーヌは、ルイ14世の寵を受け、王の修史官となり、貴族をさしおいて王と面会できた。

ところが悲劇のもう一方の代表者コルネイユは、王権は窮屈に感じて庇護をやめてしまう。そして書いたのが大作「ル・シッド」である。この劇はスペインの英雄をテーマにしたが、決闘で恋人の父を殺すが、イスラムの侵入を撃退して許され、結婚するというストーリーで、道徳に外れると批判された。しかし彼は、人間が自分を貫くというこれからの価値観を表現したのである。

下はマスネのオペラ「ル・シッド」のアリア

0コメント

  • 1000 / 1000

キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。